走れや走れや 夜が明ける
釵子(さいし)や櫛とて投げ捨てて
揺れる火影(ほかげ)に身を重ね
いざ音を殺して ここから さあ逃げろ！
すげなし娘よ
どこへ逃げやうとおまへはお雛のもの
何案ずることなどありんせん
今直ぐさ丹塗り(さにぬり)爪先(つまさき)舐めりんせ
なにもかもおまへの望み
全て失くした全てて與えやう
後に殘るはお雛の欲すは
この心だけ心も軀(からだ)も
濡れる肢體(からだ)とおまへと二人
乾く涙と他には何も
狂えば最後なにも要らぬと
死ぬまで虜さあお雛が手の內
三櫛(みぐし)九重(ここのえ)お雛に同じよ
黒の夜空に光るは月か
おまへの濡れた真白の肌に
躍る血びらは萬華鏡
絡める指を払いて
逃がさぬ
逃げろおいでや
逃げろおいで
地獄の園にはおまへの遊びも
今宵が最後よひなにげ
急げや急げや日が昇る
消えゆく白粉(おしろい)振り払い
揺れる火影に身を重ね
いざ音を殺してここからさあ逃げろ！
いけずな娘よ
どこへ逃げやうとおまへはお雛のもの
初(うい)の音ならしてどう可愛がろう
歪みし面(おもて)はさぞ美しかろう
どうすれば尚におまへは
鎖を解ける足りぬと言うか
後に殘るはお雛の欲すは
この心だけおまへのすべてよ
霞む視界とおまへと二人
詰まる吐息と他には何も
狂えば最後おまへが欲しい
死ぬまで虜さあお雛が手の內
椿のやうに滴る唇
夜空に光るはまことに月か
おまへの潤んだ瑠璃の瞳に
映る焰(ほむら)は萬華鏡
伸ばした掌(てのひら) 空きり
逃がさぬ
逃げろおいでや
逃げろおいで
狂気の園にはおまへの遊びも
今宵が最後よひなにげ
月に透(す)く髪揺らめく彩り
黒の夜空に光るは禦眼(まなこ)
おまへの光る白い首筋に
滲む雫は萬華鏡
捕られた手首は空きり
逃がさぬ
逃げろおいでや
逃げろおいで
狂気の園にはおまへの遊びも
今宵が最後よひなにげ
首筋なぞるはさ丹塗り紅爪
仕方の無い子じゃこちらへおいで…
三櫛九重お雛に同じよ
黒の夜空が光りて剎那
おまへの濡れた真白の肌に
躍る血びらは萬華鏡
囁く聲が響いて
「逃がさぬ」
逃げろおいでや
逃げろおいで
地獄の園にはおまへの遊びも
今宵が最後よひなにげ
おまへは永遠にお雛のものよ
過る黃金(こがね)に映るは眼
おまへの瞳に宿る絶望に
溶ける痛みは萬華鏡
揺らめく聲が響いて
「愛しい」
逃げろおいでや
逃げろおいで
わたしの望みもおまへの遊びも
今宵が最後よひなにげ
雛逃げ (feat. 初音ミク VS メグッポイド)