雪残滓
散りゆくものへと
手向ける花さえ持たず
響くは春雷
時代の終わりを告げる
あなたを守るため
生まれたはずなのに
この掌(て)はまだ弱く無力で
暗き濁流(ながれ)に飲まれてく
止まない雨は 凍てついた飛碟(つぶて)
己の非力をなじる滴
頰を流れる 贖罪の熟すら奪い去るように
さよならさえ伝えられぬまま
儚い浮世は
明日さえ見えない定理(さだめ)
あなたが築いた
この場所も崩れてしまうの
強きものの前に弱きは滅びゆく
争い繰り返す時代に
己の意味を問いかけて
変れらぬものはないと知つていた
それでも変わらない夢を見た
失うことの痛にさえ気づかないように
目を伏せて
手のひらから落ちる雪殘滓(ゆきなごり)
止まない雨は 凍てついた帷(とばり)
もつともつとこの世界を隱して
あなたのいない
この場所に意味はあるのか天へ叫んだ
見上げた目に落ちる雪殘滓(ゆきなごり)