毒もみのすきな署長さん
毒もみのすきな署長さん
宮沢賢治
「署長さん、ご存じでしょうか、近頃、林野(りんや)取締法(とりしまりほう)の第一條をやぶるものが大変あるそうですが、どうしたのでしょう。」
署長先生,您知道嗎,最近違反了林野取締法第一條會很麻煩,這是怎麼了?
「はあ、そんなことがありますかな。」
哦?有那樣的事嗎?
「どうもあるそうですよ。わたしの家の山椒の皮もはがれましたし、それに魚が、たびたび死んでうかびあがるというではありませんか。」
似乎是這樣呢。我家里山椒的皮都掉了,而且,魚不也經常死掉然後浮起來了嗎?
すると署長さんがなんだか変にわらいました。けれどもそれも気のせいかしらと、町長さんは思いました。
署長也覺得有點奇怪。 “但是這也只是你的錯覺吧......”鎮長這麼想著。
「はあ、そんな評判がありますかな。」
啊......有這樣的評價嗎?
「ありますとも。どうもそしてその、子供らが、あなたのしわざだと雲いますが、困ったもんですな。」
大概是有這樣的事吧,而且,孩子們說這是你做的事情,真的很傷腦筋啊。
署長さんは椅子から飛びあがりました。
署長從椅子上跳了起來。
「そいつは大へんだ。僕の名譽(めいよ)にも関係します。早速(さっそく)犯人をつかまえます。」
這事太糟糕了,這也與我的名譽有關,快點把犯人抓起來!
「何かおてがかりがありますか。」
請問您有什麼線索嗎?
「さあ、そうそう、ありますとも。ちゃんと証拠(しょうこ)があがっています。」
誰知道呢......啊,對了,有的,證據確鑿。
「もうおわかりですか。」
您知道了嗎?
「よくわかってます。実は毒もみは私ですがね。」
我很清楚,事實上,有毒的東西就是我啊。
署長さんは町長さんの前へ顔をつき出してこの顔を見ろというようにしました。
署長把臉貼在鎮長面前,看了看他的臉。
町長さんも愕(おどろ)きました。
鎮長也嚇了一跳。
「あなた? やっぱりそうでしたか。」
你嗎?果然是那樣嗎?
「そうです。」
是啊。
「そんならもうたしかですね。」
那麼,就這樣了。
「たしかですとも。」
確實是這樣。
署長さんは落ち著いて、卓子(テーブル)の上の鐘(かね)を一つカーンと叩(たた)いて、赤ひげのもじゃもじゃ生えた、第一等の探偵(たんてい)を呼びました。
署長冷靜了下來,按了桌上的鈴,喊來了長著亂蓬蓬的紅鬍子的最好的偵探。
さて署長さんは縛(しば)られて、裁判にかかり死刑(しけい)ということにきまりました。
之後,署長被綁了起來,被法官判了死刑。
いよいよ巨(おお)きな曲った刀で、首を落されるとき、署長さんは笑って雲いました。
在他的頭被大彎刀砍下來的時候,署長笑著說:
「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中(むちゅう)なんだ。いよいよこんどは、地獄(じごく)で毒もみをやるかな。」
“啊,真是有趣啊。說到毒稻穀這種東西,我已經完全著迷了。這次終於要在地獄這個地方生產毒稻穀了啊。”
大家都對他很是敬佩。
みんなはすっかり感服しました。